『あなたの票は、本当に数えられているか?』〜老人ホームの「代筆」と開票所の「密室」〜
導入:投票箱のその先を知っていますか?
衆議院解散、総選挙。テレビやネットは「どこが勝つか」という競馬のような予想で持ちきりです。
しかし、法務博士として私が注目するのは、もっと根本的なシステムの問題です。あなたが投じたその「清き一票」。それが本当に、誰の介入もなく、あなたの意思通りにカウントされているという保証はどこにあるのでしょうか?
「日本で不正なんてあるわけない」。そう信じているあなたにこそ、この国の選挙制度の「闇(バグ)」を知っていただきたいのです。
展開①:「入り口」の闇 〜老人ホームの【不在者投票】で起きる不正〜
まず、「票が入る瞬間(入り口)」に存在するブラックボックスです。
自分で投票所に行けない高齢者のために、施設内で投票できる「不在者投票制度」があります。しかし、その運用は密室で行われ、施設の「良心」に丸投げされています。
「そんなの都市伝説でしょう?」と思いますか?
2014年、**「高松市老人ホーム不正投票事件」**という衝撃的な事件が起きています。
特別養護老人ホームの副施設長らが、認知症などで意思表示が難しい入所者3人の投票用紙に、勝手に特定の候補者名を書いて投票し、有罪判決を受けました。
これは氷山の一角に過ぎません。閉ざされた施設の中で、職員が「A候補に入れておきますね」と誘導したり、白紙の用紙をまとめて“処理”したりしていたとしても、外部の誰も気づけない。それが今の仕組みなのです。
展開②:「出口」の闇 〜【無効票】や【按分票】を決める密室のルール〜
次に、「票を数える瞬間(出口)」の闇です。
「疑問票」の扱いをご存知でしょうか? たとえば、字が汚くて読めない票や、候補者以外の記号が書かれた票。これを「有効」にするか「無効」にするか、あるいは「どっちの候補への票か」を決めるのは、現場の開票管理者(選管)の胸三寸です。
また、「按分票(あんぶんひょう)」という不可解なルールもあります。
たとえば「田中A」と「田中B」という候補がいる選挙区で、ただ「田中」とだけ書かれた票があった場合、無効にはなりません。その票は「0.5票ずつ」、あるいは得票割合に応じて「0.6票と0.4票」のように分割されます。
では、この判定作業が、完全に公正に行われていると誰が証明できるでしょう?
開票作業はブラックボックス化した機械の中で行われ、検証可能な録画データも残りません。もし密室で意図的な操作が行われていたとしても、それを暴く証拠は残らないのです。
分析:法務博士のメス 〜【公職選挙法】のジレンマと限界〜
この問題を法的な視点で見ると、二つの「構造的欠陥」が浮かび上がります。
一つ目は、「性善説への過度な依存」と「検証不可能性」です。
「介護施設の職員は悪いことをしないはずだ」「選挙管理委員会は中立なはずだ」。日本の公職選挙法は、この美しい前提の上に設計されています。
しかし、改ざん不可能なブロックチェーン技術などが議論される現代において、いまだに「鉛筆書きの紙」と「人の目視」に頼り、なおかつプロセスを映像で記録すらしない。
政治という権力闘争の場において、この「後から誰も検証できない(検証不可能性)」という状態こそが、民主主義の正当性を揺るがす最大のリスクなのです。
二つ目は、「選挙4原則のジレンマ(衝突)」です。
そもそも、なぜ不在者投票という制度があるのか。それは、身体が不自由な人々にも投票権を保証し、「普通選挙」の原則を貫くためです。
しかし、その運用を一歩間違えれば、「秘密選挙(誰にも知られずに書く)」と「直接選挙(自分の意思で書く)」という、別の重要な原則が踏みにじられます。
現在の公職選挙法は、「普通選挙(投票率)」を守ることに必死で、密室で失われる「秘密」と「直接」の原則を、現場任せにしてしまっているのです。これは、民主主義のOSにおける「あちらを立てればこちらが立たず(トレードオフ)」の失敗例と言えるでしょう。
結論:ただ投票に行くだけでは足りない
したがって、我々有権者に求められるのは、「投票に行くこと」だけではありません。
「その票がどう扱われるかを監視すること」です。
開票作業は、誰でも参観できます。また、選挙管理委員会に対して「施設ごとの代理投票率」などの情報公開を求めることも可能です。
「お任せ」にするのではなく、「我々は見ているぞ」という視線を常に送り続けること。
権力の暴走や不正を防ぐのは、政治家の良心ではなく、主権者である私たち一人ひとりの「冷徹な監視の目」だけなのです。






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