『減税で値上がり!?』消費税減税の罠〜2026年衆院選公約の嘘を見抜く法〜

2026年2月1日

導入:その減税、どっちの方式ですか?

2026年衆議院総選挙を控え、各党から「消費税減税」「食料品非課税」などの威勢のいい公約が飛び交っています。物価高に苦しむ私たちにとって、それは魅力的な響きです。
しかし、法務博士として断言します。「言葉の定義」を確認せずに喜ぶのは危険です。
彼らが言っているのは「非課税(ひかぜい)」ですか? それとも「免税(めんぜい/ゼロ税率)」ですか?
この二つは似て非なるものです。もし前者の「非課税」で行うなら、あなたの暮らしは楽になるどころか、かえって物価が上がる可能性があります。

展開:「非課税」だと逆に値上がりするメカニズム

なぜ「消費税を取らない(非課税)」にすると、かえって物の値段が上がるのでしょうか?その理由は、お店が国に税金を納める時の「計算ルール」にあります。

通常、お店(事業者)は国に税金を納める際、次のような計算をしています。
【納める税金 = お客さんから預かった税金 - 仕入れで払った税金】

ところが、売上が「非課税」になると、この数式から「お客さんから預かった税金」がゼロになるだけでなく、「仕入れで払った税金」を差し引く権利まで消滅してしまうのです。

具体的な数字で考えてみましょう。

100円の材料を仕入れて、200円でパンを売る店があるとします。
現在、お店は材料を買う時に10円の消費税を払っています。通常なら、この10円は後で国に納める分から差し引けるため、お店の損にはなりません。

しかし、パンが「非課税」になると、レジで受け取る消費税は0円です。
すると税務署はこう言います。
「あなたはお客さんから税金を預かっていない。だから、あなたが材料代で払った10円を差し引く(返してもらう)ことは認めない

お店からすれば、電気代や材料費にかかった10円分の消費税が、どこからも回収できない**「丸々の損(損税)」となってズシリと経営にのしかかります。
赤字を避けるためには、どうするべきか。経営者なら、その損した10円分を
商品の「本体価格」に上乗せする**しかありません。

結果として、「消費税」という名目は消えても、商品そのものが値上がりし、消費者が支払う総額は変わらないか、むしろ便乗値上げを招く「最悪の減税」になりかねないのです。

通常、お店は「お客さんから預かった税金」から「問屋さんなどに払った税金」を引き算(仕入税額控除)して、残りを国に納めます。

分析:なぜ「ゼロ税率(免税)」は実現しないのか?

一方、「ゼロ税率(免税)」なら、店は仕入れで払った税金を国から返金(還付)してもらえるため、きれいに値下げができます。ヨーロッパなどはこの方式です。
「じゃあ、ゼロ税率にすればいいじゃないか」と思いますよね?
しかし、これを実現しようとすると、政界・財界・官僚の四方八方から猛烈な「本音の反対」が噴き出します。

  • 輸出大企業の事情:ここが聖域です。トヨタなどの輸出企業は、海外に売る製品について、仕入れにかかった消費税分を国から「還付金」として受け取っています。もし消費税率を一律に下げると、彼らが受け取る還付金の額も減ってしまいます。だから「一律減税」は絶対に許しません。
  • 経済界の恐怖:消費税収が減れば、その穴埋めとして「法人税」が増税されるリスクがあります。それを嫌がります。
  • 財務省とシステムの壁:現在の日本の消費税法には、国内取引で還付する仕組み自体が存在しません。法改正とシステム改修に年単位の時間がかかります。「財源はどうするんだ」という壁も立ちはだかります。
▼ 衝撃の真実:トヨタは消費税を払っていない?

実は、この「輸出還付金」こそが、消費税が導入された真の目的であり、日本の賃金が上がらない元凶でもあります。
トヨタなどの輸出大企業が、消費税システムでどれほど得をしているのか。豊田税務署の「赤字」から読み解く驚愕のカラクリは、こちらの記事で詳しく解説しています。

深掘り:中小企業を殺す「淘汰」のシナリオ

さらに残酷なのが、個人商店などの「免税事業者」です。
彼らはこれまで、預かった消費税を利益(益税)にすることで、ギリギリ経営を維持してきました。これは導入時の政治的妥協(毒饅頭)でしたが、もはや彼らの生命線です。
もし減税で「消費税0」になったら? 売上がいきなり1割消滅します。
生き残るためには値上げするしかありませんが、それは消費者からの猛反発を招くでしょう。「減税」という甘い言葉の裏で、体力のない中小業者が廃業に追い込まれ、結局は体力のある大企業だけが生き残る。そんな「弱者淘汰のシナリオ」が見え隠れします。

結論:選挙後の「うやむや」を見抜けるか

ここから透けて見えるのは、選挙後の冷たい未来です。
前回の選挙(2025年参議院通常選挙)を思い出してください。「国民一律に給付金を配る」といった公約はどうなりましたか? 選挙が終われば、議論するフリをして雲散霧消しました。
今回も同じです。
各政党は「減税!」と叫んで票を集めます(客寄せパンダ)。しかし、当選した後で官僚から「ゼロ税率はシステム改修が無理です」と説明されると、彼らはこう言うでしょう。
「じゃあ、すぐにできる『非課税』方式でお茶を濁そう」
あるいは、
「議論が必要なので、先送り(事実上の撤回)しよう」

もし「非課税」が強行されれば現場は値上げで混乱し、もし「先送り」されれば公約違反です。
スローガンに踊らされてはいけません。我々が見極めるべきは、「減税」という言葉ではなく、「システム改修の工程表はあるか?」「中小企業の倒産を防ぐ具体策はあるか?」というリアリズムなのです。